感性
2024.2.2
#25 資生堂の理論が自分のデザインの裏付けに ~ハンモック美容室COCONA 角貝雄二~
【 角貝雄二 】
1997年真野美容専門学校卒業。都内有名店に入社。数多くの撮影やヘアショーに参加し、腕を磨く。その後、エクステ専門店、縮毛矯正専門店、セットサロン、新大久保の外国人向けサロンなどを経験。独立前にSABFAのサロンメイクアップコースで学ぶ。独自の美容世界を確立しハンモックヘアカットを考案。2017年ハンモック美容室COCONAを立ち上げる。
東京・高円寺にあるハンモック美容室COCONAは、ハンモックの上でリラックスした状態でカットするというユニークなコンセプトのヘアサロンです。その唯一無二の空間に、テレビやラジオなどのメディアからの取材が殺到しています。オーナーの角貝さんいわく、SABFAの学びがサロンづくりにも生かされているのだとか。そもそも角貝さんはなぜSABFAに入学したのか。そして、どんな学びが、どのように生かされているのかを教えていただきました。
INDEX
一時期はハサミを置き、ネクタイを締めていた
僕は気になったことはなんでも実際に試したくなる性格なんです。
最初に勤めたのは、表参道の有名美容室でした。メーカーさんと一緒に製品開発する機会があり、「もっと美容師目線の開発をしたらいいのに」という思いがきっかけで、実際に働いてみたくなったんです。だから、美容メーカーに転職しました。つまり僕は一度、ハサミを置いています。
メーカーで働いているとき、日本全国の美容室を巡りました。僕は「東京の美容室が一番」だと思っていましたが全然そんなことはなく、地方にも個性的で繁盛している美容室がいっぱいあったんです。「美容室って想像していたよりも、自由な発想で経営できるんだな」と思いました。
一方で、メーカーで働いたからこそ、サロンワークの尊さに気づき、もう一度美容師をやりたくなったんです。メーカーを退職したタイミングで、同じ会社の先輩が独立し、サロン事業をやるというので、立ち上げから参画しました。
美容室をイチからつくる体験をさせてもらい、とても勉強になりましたが、店舗運営がメインの仕事になってクリエイションからは離れてしまったんですね。
もう一度、美容師としてクリエイションを追求したい。僕がSABFAに入ろうと思ったのは、そんな思いがきっかけでした。
恋人との結婚か、SABFAに入学か
ヘアメイクアップを学ぶために学校を調べたのですが、卒業生の作品を見比べて「いいな」と思ったのはSABFAのものでした。SABFAは厳しいという噂を聞いていましたが、だからこそ成長できるイメージがあったんです。
その当時、結婚を前提にお付き合いしていた恋人がいたのですが、SABFAに入ることを伝えると、「そんな大変な学校に通うっていうことは、本気で結婚するつもりないの?」と叱られてしまいまして…。結果として別れてしまったという悲しい裏話もあります。でも、それだけ強くSABFAで学びたいと思っていたんですよ。
当時のSABFAは入学試験にデッサンがあったのですが、自分はまるで経験したことがなかったので面食らったのを覚えています。入学後も驚きの連続で、特に関西や四国から通っている同級生には刺激を受けました。「人生をかけて学びにきている人たちと、同じ熱量で学ぶことになるんだ」と覚悟しましたね。
卒業制作の生みの苦しみが財産に
SABFAで学べて良かったことはいろいろありますが、特に資生堂の理論を学べたことが自分にとって大きかったです。それまで、なんとなくカワイイとかカッコいいと思うものをデザインしていましたが、全てのデザインには裏付けとなる理論があるとわかりました。
人が本能的にカワイイと感じるカラーやフォルムがある。そして、カワイイを構成する要素で統一するから、デザインに説得力が出てくる。卒業して10年以上経ちますが、その考え方は今も自分の中で生きています。
また、生みの苦しみを経験できたことも自分の人生にプラスになりました。卒業制作をするまでは、テーマが与えられた上でそれをデザインすることがほとんど。卒業制作では、自分でゼロから考えてテーマを決めた上で、創作していくことになります。僕にとってそれは初めての経験でした。
先生たちに納得してもらえるクオリティのものをつくりたいけれど、何もアイディアが出てこない。それで思い詰めて10kgくらい痩せてしまったことも。進藤郁子先生にも「大丈夫?」と心配されてしまったことを覚えています。
卒業制作では、羽根をふんだんに使った野生的なイメージの作品をつくったんですが、なかなかイメージを超える出来になりませんでした。最後の最後まで悩み抜き、いよいよ写真を撮る段階になって進藤先生にいただいた「目頭に小さな羽をつけてみたらどう?」というアドバイスで、作品に命が吹き込まれたんです。進藤先生が神のように見えました。
ハンモックサロンにもSABFAの学びが生きている
SABFAに通っていなかったら、今のようなハンモックサロンはなかったと思います。もともと僕は音楽が好きで、アメリカの野外フェスにも参戦していました。ハンモックの上で音楽を楽しむイベントに感激し、自宅でもハンモック生活をスタートしました。
働いていた美容室にもハンモックを置きたいと思いましたが、ハンモックに座ってもらった状態で髪を切るなんて普通のサロンはやらないじゃないですか。待合のところに置いて寛いでもらうくらいならできるかもしれませんが。
なので、ハンモックサロンをつくるなら自分でやるしかないと思い、独立しました。
サロンをつくるときに意識したのは、SABFAで学んだ一貫性のあるデザインです。フロアをハンモックで埋めつくすのはもちろん、鏡をふくめ吊れるものは吊るしています。
ありがたいことに、テレビやラジオ、YouTubeなどさまざまなメディアで取り上げていただいていますが、面白がってもらえる理由は、ハンモックヘアサロンとして徹底的にコンセプトを貫いているからだと感じています。待合にハンモックを吊るしているだけなら、今のように注目されてないでしょうね。
ヘアメイクアップの技術を、高円寺の文化づくりに役立てたい
高円寺はサブカルチャーの街として知られています。ハンモックヘアサロンのような新しいことも受け入れてくれるだろうと思って出店しました。設立から8年がたち、高円寺の街に愛着が湧いています。
仲間も増えました。クリエイティブな洋服屋さんやミュージシャン、アーティストなど、本当に魅力的な人たちがいるんですが、ヘアメイクアップを通じてもっとコラボレーションしていきたいなと思っているところです。そうした活動を通じて、高円寺のカルチャーをより魅力的なものにしていきたいですね。
個人的な目標としては、ハンモックの可能性をもっともっと追求していきたいなと。たとえば、ハンモックに乗って楽しめるプラネタリウムが人気なのですが、ウチのお店でも同じようなことができないか考えているところです。
ハンモックの長所は長時間座っていても疲れないことなので、ゲーミングチェアとしてハンモックを提案したいですし、ドレッドヘアのような施術に時間がかかるヘアをハンモックヘアサロンでやりませんか?という提案もしてみたいですね。それら以外にも、自分自身が楽しいと感じる仕掛けをどんどんやっていきます。
最後にSABFAへの入学を検討している人に伝えたいのは、美容やファッションに関する仕事をしている人は、全員SABFAで学んでほしいと思うくらい、自分にとって大きな学びがあったことです。ですから、いますぐSABFAに応募したほうがいい。本気でそう思っています。
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