SABFA magazine

感性

2022.10.3

♯12 creative SHOWER –美と感性をあびる時間– 森 星 navigated by 豊田 健治 『暮らしを豊かにする感性の磨き方』イベントレポート

美容技術者をはじめ、美に携わる方々にとって自身のクリエイティビティや仕事に新たな価値を生み出し、表現の幅を広げる機会を目指すイベント「creative SHOWER」。毎回豪華なゲストを講師としてお迎えしています。

第3回目のゲストはモデルとして国内外で数々のファッション誌や広告などで活躍され、最近では環境や社会と共により美しく生きるための活動にも取り組まれている森星さん。資生堂の豊田健治とのトークセッションを通じて、ご自身の美意識や感性の高め方をシェアしていただきました。本記事ではイベント当日の様子をダイジェストでお届けします。

【 森 星(モリ ヒカリ)】
1992年生まれ。東京都出身。モデルとして国内外の雑誌や広告等で活躍。途上国の女の子を支援する公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーを務め、YoutubeやInstagramなどのSNSを通して体にも環境にも優しい生活を提案。創業者の一人としてCDを務めるtefutefuでは、日本の伝統的な食や文化を尊重しつつ現代に馴染むカタチに再編集し、世界に発信している。

【 豊田 健治(トヨタ ケンジ)】
2002年入社、資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。ニューヨークやパリ、東京コレクション等で活動。個性を生かすシンプルなデザインが得意で、宣伝広告のヘアメイクを中心に携わる。最新ヘアメイクトレンドの傾向分析も行っている。

森 星さんが影響を受けた二冊の書籍

豊田 森さんとは広告の現場で知り合ったのですが、会場のみなさんがイメージしている通り素敵なモデルさんです。いつかその感覚や頭の中にあるものをみなさんにシェアしてもらう機会をつくりたいなと思っていて、それが今日実現しました。

※出典:『美』福原義春著(PHP研究所)*現在電子書籍のみ発売中

みなさんに何か一つでも持って帰ってもらえるように頑張りますね。では、まず私が影響を受けた本から紹介します。私が資生堂さんのモデルとしてお仕事をいただいたときに、友人から「モデルをするならこの本を読んでおくといいよ」と『美「見えないものをみる」ということ』(福原義春)を薦められたんです。言葉にできないものや、心の中にある温かいものを福原さんは大事にされており、映画やアートなどいろいろなものに触れて、クリエイトしていくのが資生堂のスタンスなのではないかと感じたんです。
今はとてもコンビニエンスな世の中ですが、それに流されすぎずグッと戻してくれる本というか、自分を内側から成長させて、一番の美しさを探求していきたいと思わされる内容でした。自分の五感を研ぎ澄ますことを意識するきっかけになった一冊です。

※出典:新潮社

私に影響を与えたもう一冊の本は、祖母が書いたものです。『あしたのデザイン』(森 英恵)は1982年に書かれたものですが、やはり時代は回るものだから、男女関係の在り方とか、仕事と家庭の両立とか、今にも当てはまるトピックがいっぱいあるんですね。食事や自分の体の労わり方などのベーシックなことも書いてあり、自分を整えるきっかけになりました。

インプットしたことを体験しながらアウトプットする

豊田 星さんは、興味があることをどんどんインプットして体験を通じてアウトプットしているイメージですが、最近ではどんな取り組みをしていますか?

食べ物の皮や茎まで全部使う「ホールフード」ですね。料理研究家の有元葉子先生と一緒にGINZAというメディアで連載もさせてもらっています。

例えば、生姜を干して酢につけて、炭酸水で割ってドリンクにしたり、あとはハーブをほしてそれをオリーブオイルにつけたり。本当に食材を全て使って楽しんでいます。

豐田 どうしてやろうと思ったんですか?

新しい知識を得たり、刺激を受けたりしたとき、やっぱり自分の手を動かしてその過程を知ると、新しい気づきがあるし、豊かさを感じられるんです。食は自分の細胞をつくるものだから、適当に済ませたくありません。感覚的な話になってしまいますが、時間を短縮すると短縮しただけの埋め合わせがあるかもしれないし、何よりプロセスを体験すること自体に楽しみがあります。

豐田 僕たちはすぐに答えを求めがちだけれど、そのプロセスに大切なものが詰まっているということもしれないですね。

持続可能な暮らしを実践する「パーマカルチャーデザイナー」に学ぶ

山梨県で持続可能な暮らしをデザインする「パーマネントデザイン」を実践している方との出会いも私にとって大きかったです。私はその方のことを師匠って呼んでいるんですけれど。1000坪くらいある敷地で、自然と共存しながら暮らしているのですが、こういう暮らしをすることが大変ですごくハードルが高く見えてしまうことが悩みなのだそうです。「だから代わりにたくさんの人に伝えてくれないか」ということで、いろいろと教えてもらっています。

豊田 これは何をつくっているところですか?

「バグホテル」という虫のホテルです。虫の住処がなくなってしまったところに置くと、ここに虫が入ってきます。そうすると、害虫を食べてくれるような虫が住み着いて、害虫が極端に増えないようにバランスが取れるんです。これはごく一部ですけれど、こういう自然が循環する仕組みをつくっています。

豊田 そこにクリエイティビティを取り入れるところが星さんのすごいところですね。モデルの仕事にもつながっていますか?

自然と共存する暮らしに憧れますが、すぐに切り替えることは難しいし、これからも勉強が必要なんですけれど、自分がこれまでやってきた仕事とうまく融合できたらいいなということで、雑誌の企画でファッション・シュートをしました。
20年以上かけて、土を耕すところから少しつずつ始まった暮らしが実践されている空間とファッションは、一見すると両極端にあるけれど、そこをつなぎ合わせる架け橋になりたいです。

日本の伝統文化を再編集して今に落とし込む

豊田 昨年からすごく大きなアクションを起こされたとか。

まだまだ一歩踏み出したところですが、日本の文化をリスペクトしながら現代にあわせて再編集するプロジェクト「tefutefu, Inc.」(https://tefutefulab.com/ja)をスタートしました。「暮らしと調和する」がコンセプトです。
先ほどもお話しした「パーマネントカルチャー」ってカタカナにすると新しい響きがするかもしれませんが、「里山の暮らし」がそれそのものなんですよね。

この棚田の写真は、農業遺産に指定されている千枚田です。いつもお米食べているけど、田んぼにいるおたまじゃくしの様子とか、田んぼに足を踏み入れたときの感触とか忘れてしまっていたなぁと思って。
「tefutefu, Inc.」では、日本で生まれた叡智をピックアップしていきます。例えば、漆にしても藍染にしても草木を生かしているじゃないですか。しかも、自然の中で循環している。生まれるまでのストーリーも素敵だし、色合いや風合いも素敵です。そういう伝統的なクリエイティビティをしっかりと学び、再編集することで、あらためて日本の伝統を誇るきっかけになればいいなと思っています。

豊田 千枚田のお米も素敵ですよね、

このお米は能登の千枚田でつくったものです。里山里海の文化がまだ残る素敵なところなんですよ。里山では人の手が加わることで維持されて、多様な生命が生まれています。人の役割がすごく大事だと知ることができる場所です。

ライフスタイルストア「city shed」

豊田 ここまでの話を聞いていて、クリエイションをしながらその土地にいる人や一緒にいる人たちをハッピーにしているのがすごいなぁと思いました。一方で、「tefutefu, Inc.」とはまた違う取り組みもしているんですよね。

2年前に「city shed」というポップアップストアを渋谷スクランブルスクエアに出しています。そこは自分の家を再現しているんですよね。都会では常に新しいものが生まれ新しいことが起こっているけれど、自然や伝統を置き去りにするのではなくて、どうやって共生していくかという思いが「city shed」に込められています。
難しく考えず、単純に「これ、かわいいよね」というところから入って、その背景にあるストーリーを知ってもらうのもいいかなと。サステナブルって何かを制限するとか、そういうことじゃないし、デザインの力が加わればきっと楽しくなりますよね。

豊田 ところで、今日のお話を始める前の打ち合わせで、星さんはね、すごく感動することをサラッと言ったんです。

え、何でしょう?

豊田 「感性を失うと、豊かさも失うんだよね」って。逆に言えば、感性を高めていくことが、豊かさに繋がるんだろうなとそれを聞いて思いました。

そうかもしれない。元気がないときに元気を出すためにも感性を磨くことが大事だと思います。私は自然って究極のデザインだと思うんですよね。私は葉っぱとかつくれないし、木を植えることはできるけれどイチからデザインすることはできない。視覚的にみえないものを五感で感じ取ることもできる。自然から何かを感じ取れれば、感性も磨かれると思います。
こんな感じで今日はみなさんの前でお話ししていますけれど、まだまだ勉強中なので、何か一つでもみなさんの参考になればうれしいです。

豊田 星さん、今日はありがとうございました!

今後のcreative SHOWERもご期待ください。creative SHOWERは2022年10月3日から新しい形でスタートします。開催情報はSABFAのHPから事前にご覧いただけます。ぜひご参加ください。

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