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2023.8.8

#18 隠れ家美容室のオーナーがスタッフをSABFAに送る理由  AYOMOT代表 鈴木朋弥

【鈴木朋弥】
神奈川県逗子市出身。早見美容芸術専門学校を卒業し、2001年にSABFAサロンメイクアップコースに入学。2002年にJHAにノミネートされた。有名ヘアサロンがひしめく南青山エリアで、看板すらない隠れ家サロンを経営。広告やSNSを使った集客は一切行わず、クチコミだけで繁盛店を築き上げた。サロン経営に加えて、医師や弁護士、税理士や経営者向けのマーケティング・コンサルティングも行っている。

人が人を呼ぶ「紹介」に着目した「リファラル・マーケティング」。今では有効なマーケティング手法として認知されていますが、その言葉が日本に浸透する遥か前、20年以上前からお客様の紹介やクチコミだけで事業を展開してきたのが鈴木朋弥さん率いる「AYOMOT」です。オーナーの鈴木さんをはじめ、複数のスタッフがSABFAで学んだ経験を持っています。なぜ鈴木さんがSABFAで学ぼうと考えたのか、そして、スタッフもSABFAで学ぶのはどうしてなのか聞きました。

SABFAに入学するために美容師免許を取得

高校卒業後、私はフランス料理店で働いていました。大学を卒業した友人が社会に出るタイミングで、自分が30代、40代になったときの将来をイメージし、「やりたいことをやり残して後悔したくない」と感じたんですね。それで、中学時代に憧れた美容師やヘアメイクの世界に飛び込んだのです。そして、ヘアサロンを経営しながらヘアメイクもしている方のアシスタントになりました。そこで働いているとき、「ヘアメイクとして活躍するためには、どうやらSABFAという学校で学ぶといいらしい」と知ったんです。当時SABFAに入学するためには美容師免許が必須でした。私が美容師免許を取った理由の一つはSABFAに入るためだったんです。

ヘアメイクアップを学べる学校は他にもありますが、SABFAの修了制作の展示会を観に行ったとき、そのレベルの高さに圧倒されました。それで、ヘアメイクをやるんだったら、絶対にこの学校で学んでからにしようと心に決めたのです。

美容師免許取得後後、私は美容師としてキャリアを積んで独立し、仕事の基盤を作った上でサロンヘアメイクアップコースに入学しています。実は一度、入試に落ちていました。デッサンの試験は良かったけれど、面接で休日も仕事で忙しいと言ったので「この人、半年間ちゃんと通えるのかな?」と思われてしまったのかもしれません。翌年はしっかり時間を確保できることをアピールしたのがよかったのか、無事合格できました。

20年以上経った今も生きる学び

SABFAに通っていたのは20年以上前になりますが、今でも当時学んだことは自分の中に生き続けています。私が入学した時代は、マサ大竹さんが校長先生*(現在は資生堂美容技術専門学校理事長)で、それこそ上田美江子先生もいらしたと思いますが、美容雑誌などで作品を拝見していたアーティストがどのように制作しているのか生で見られる感動がありました。

また、資生堂が創立以来積み重ねてきた美のエッセンスを惜しみなく提供してくれることをすごく贅沢に感じましたね。ヘアデザインやヘアメイクアップの世界で「技術は見て盗め」という考え方が当たり前だった時代に、ゼロから体系的に教える仕組みにも感銘を受けました。しかも、サロンワークでできることから、ブライダル撮影に至るまで非常に幅広くカバーしていたのです。

資生堂が蓄積してきたものを体系化し、広く、深く、そこで学ぶ誰もが受け取ることができる仕組みは本当にすごいです。私がサロンの教育システムを考える上でも参考にさせてもらっています。あの半年間は、自分の一生を左右するような時間だったと思いますね。

SABFAで学んだ翌年に、日本最高峰のクリエイティブアワードとも称されるJapan Hairdressing Awardsにもノミネートされました。感覚だけではなく、理論の裏付けを持って創作できたからだと思います。間近で先生たちの展示を見てきたからこそ、「どんな技術をどのように応用しているのか」「フォルムを固定するために何をどう使うのか」など、創作の現場で実践できたのです。

最新のヘアではなく、最適のヘアを提案する

AYOMOTは広告や看板、SNSも使わないお客様の口コミだけで成り立っているサロンです。アメリカで発祥した「リファラルマーケティング」という「お客様の口コミでお客様を連れてくるマーケティング手法」を体現してきました。そのため、口コミでお客様を増やすためのコンサルタントとして、美容室だけではなく、医師や弁護士、税理士などに助言する仕事もしています。

とはいえ何か複雑なことをしているわけではありません。お客様に喜ばれる仕事をしていたら、必ずまた戻ってきてくれます。そして、ご自宅や職場などで評判が良かったら、紹介でお客様が増えます。やるべきことはシンプルです。

AYOMOTは流行のヘアスタイルを発信していませんし、流行を追うつもりもありません。最新のヘアスタイルではなく、お客様に最適なヘアスタイルを提供してきました。流行のヘアスタイルは数が限られますが、お客様にとって最適なヘアスタイルはお客様の数だけあります。

お客様のお顔やファッション、時代背景などの理解が必要だし、どんなライフスタイルを送っているかによっても、お客様に最適なヘアスタイルは変わります。私は、最新から最高までを含めた選択肢から、最適なものをお客様に提供したいのです。その上で、お客様が持っている美しさや魅力を引き出していきたい。それには当然、サロンワークに必要な技術だけではなく、表現の引き出しや知識も必要なんです。なにより、私たちは美髪だけを追求しているわけではなく、お客様のライフスタイルに合わせて、魅力を引き出す美容師ですから、髪のことだけ学んでいるのでは不十分なんですよ。

隠れ家はこちらからお迎えします

店内の様子

店内の様子

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店内の様子

サロンのスタッフがSABFAで学ぶことも支援しています。なぜなら、最新の知識をサロンに取り入れてアップデートしていきたいからです。通学しているスタッフは、毎週火曜日に学校で学んだことを他のスタッフに教えることで自分自身の理解を深め、学びを共有しています。

学んだことを人に教えることで、自分自身の理解が深まることはよく言われていますし、自分の理解が浅い部分も見えてきます。フワッとした状態で教えることはできませんから。つまり、学びと共有のサイクルがあるため、本人もサロンもレベルアップする相乗効果があるわけです。

SABFAの課題に取り組み、自分の力を出し切り、自分自身の殻を打ち破っていくことも大きなプラスになります。また、遠方から人生をかけて学びに来ている人もいるし、先生も生徒もレベルが高いため、ウチのスタッフも最初は周囲に圧倒されていると思います。
その環境に身を置いて学ぶことに意味があるのです。

寝ても覚めても美容のことばかり考えている仲間と切磋琢磨していたら、学校にいない時間も美容について考えると思います。「今、この瞬間、ライバルたちは美容と向き合っている」と意識したら、成長しないわけがないです。

中国の諺に「1年先を考える者は花を植える、10年先を考える者は木を植える、100年先を考える者は人を育てる」というものがあります。大事なのは、美しいものをつくることよりも、美しいものを生み出す人を育てること。人類の歴史も、その積み重ねだと思います。それを実践しているのが資生堂だと思いますし、私たちも美しさを生み出す人を育て続けようと思います。


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