SABFA magazine

ヘアメイクアップアーティスト

2023.7.4

#17 SABFAの学びを武器に、ニューヨークで生きる。 Salon87 Brooklyn ヘアスタイリスト 西山知佳

【 西山知佳 】
茨城県出身。山野美容芸術短期大学卒業後、資生堂美容室入社。サロン&スパ銀座でスタイリストとして働きながらSABFAのビューティークリエイターコースでヘアメイクアップを学ぶ。卒業後はサロンワークを軸にしつつ、国内外のセミナー講師としても活躍。29歳で退社し、ニューヨーク・ブルックリンに拠点を移す。現在Salon87Brooklynに所属。サロンワークと並行して、ヘアスタイリストとして、VOGUEやHarper'sBazaarなどのマガジンや、Converse、New Balanceの広告など数多くの撮影に参加している。

ニューヨーク・ブルックリンでヘアスタイリストとして活躍している西山知佳さん。SABFAでの学びが、海外で仕事をする上でも役立っているそうです。どんな学びが、どのように生かされているのか。ニューヨークで働く日本人美容師の現地事情とあわせて教えていただきました。海外で活躍する夢を持っているかた必読のインタビューです。

海外で活躍する夢に向かって歩んできた道

小学生のころからメイクに興味があり、海外で働くことを夢見ていました。短期大学に進学後は、美容師とヘアメイクアップの両方に興味がわいたので、就職先はそのどちらも学べる環境がいいなと思っていたんです。資生堂サロン&スパ銀座を選んだのはそのためでした。

今もよく覚えているのですが、新人研修のときに現SABFA校長の計良宏文さんたちが、私たちに向けてヘアショーを披露してくれたことが印象的で、「こういうクリエイティブな世界があるんだな。カッコいいな」と本気で憧れました。

ヘアメイクアップの世界に憧れ、「計良さんたちのようになりたい!」と思い、アシスタントをしながらクリエイティブコンテストにも積極的に参加していました。その甲斐があってSABFAで学ぶ機会をいただいたんです。

当時のビューティークリエイターコースで1年間みっちりと学び、ヘアメイクアップやクリエイションの基本と、美の原理原則を体に染み込ませました。入学当初、私はまだアシスタントだったこともあり、周りのクラスメイト達の技術レベルの高さに驚いたことを覚えています。

また、私はヘアメイクアップ志望だったのに、あまり知識がなかったんです。「信竜 淳二さんやGOROさんなど、すごいアーティストがいるよ」と教えてもらって勉強し、海外のアーティストに興味を持つようになったのも同期メンバーのおかげですね。

29歳のラストチャンスに渡米

ベースの技術が高い人たちが、さらに上を目指すSABFAで切磋琢磨できたことは自分にとってプラスでした。同期のメンバーは働く場所も年齢も性別もバラバラでしたけれど、仲が良かったです。今もみんな大切な友人ですね。

卒業後は、サロンワークをメインにしつつ、国内外でカットやカラーのセミナー講師をさせてもらったり、サロンのカタログの撮影をさせてもらったりと、仕事の幅を広げることができました。一方で、その間もずっと海外で働いてみたいという夢を持ち続けていたんです。そして、29歳のときにニューヨークへ。なんとなく29歳がギリギリのタイミングのように感じていて、「今行かないと一生行けないかもしれない」と思い、本当に必死になって情報収集しました。

ロンドンやパリなども考えたのですが、調べてみるとロンドンで生計を立てるのはとても大変で、パリは言葉の壁もあるし、ビザを取得することが難しそうだったんですね。ニューヨークには、私の「先輩の友人」のサロンがあったので、そのつながりでビザを取得できたんです。

とはいえ、アメリカで就労ビザを取るのも簡単ではなく、自分がアメリカで働けることを証明できないといけません。そのため、自分の作品集や、現地の方の推薦状、ジョブレター(仕事が決まっている証明)などを用意しました。

ニューヨークで活躍するSABFA卒業生が多い理由

渡米してから今までsalon87brooklynというサロンで働いているのですが、SABFAの卒業生が3人もいます。私が知っている範囲だけでも、ニューヨークで活躍している卒業生はかなりいますね。

日本にいたときは、お客さまも日本人が中心ですから、髪質もおおよそ同じです。一方で、ニューヨークは人種のるつぼと言われる場所なので、白人も黒人もアジア人もいるし、ミックスの人もすごく多い。当然、髪質も全然違います。アジア系に見えるけれど、白人系とミックスなので、アジア系の髪質とは違う、というケースもあるんですよ。

しかも、流行のヘアを求めている人よりも、個性を引き出すオンリーワンのヘアを求めている方が多い。一人ひとり骨格も髪質も肌色も違うので、それを踏まえてデザインすることは大変です。

SABFAでの学びは、サロンワークでも撮影でも生かされています。美容の原理原則や、カットやブロー、ポニーテールをつくる技術は、どんな状況でも必要なものだからです。活躍している先輩が多いのは、技術の基礎がしっかりしているからなのかもしれません。

技術があれば、アメリカンドリームをつかむチャンスがある

渡米してから6年以上たち、サロンワークが週2日で、残りはヘアスタイリストの仕事がしめています。エージェントから撮影の依頼がくることもありますが、大半は紹介がきっかけです。もしくは、サロンのホームページや、Instagramがきっかけになることもあります。でも、カメラマンさんやメイクさん、もしくは友人から「あの子は仕事を任せられるよ」と紹介してもらったときのほうがやりやすいですね。

日本はヘアもメイクアップも両方やることが多いと思いますが、ニューヨークの撮影は分業化されているので、私はヘアだけ担当することが基本です。また、知人の紹介で、VOGUEやHarper'sBazaarなどのマガジンや、Converse、NewBalanceの広告など、多くの撮影に参加することができました。ニューヨークで活躍する日本人のヘアスタイリストの先輩方のおかげもあると思います。というのも、日本人の技術と、丁寧な仕事ぶりが現地で評価されているんですよ。英語が苦手だとしても、技術力があるので信用されているのかもしれません。

ちなみに、ニューヨークのマンハッタンではカット料金が数万円です、私が働いているブルックリンでも1万円以上くらいが相場です。すごく稼いでいる日本人美容師もたくさんいるので、お金の面でもアメリカンドリームをつかむチャンスがあります。

生活面に関しては、日本のほうが安全だし便利で生活費も安いと思います。でも私は、ニューヨークが好きですね。ヘアが気に入ったら満面の笑みで、気に入らなかったらストレートに不満を顔に出してくるという感じで、感情を前面に出すカルチャーが自分あっていると思っています。

超一流アーティストが集まる現場で活躍したい

今後、チャレンジしたいのは、US版のVOGUEやHarper'sBazaarや、iDなどの仕事をすることです。US以外のVOGUEやHarper'sBazaarは経験がありますが、US版の壁はものすごく高いんですよ。でも、同じ日本人の大御所ヘアスタイリストには、超一流の舞台で活躍している人もいるので、チャンスをつかむまでチャレンジし続けたいと思います。

これからSABFAで学んで、海外で活躍したい人にぜひ伝えたいのは、「とにかく一歩踏み出さないと何も変わらないよ!」ということです。「お金を貯めてから行こう」とか「英語を話せるようになってから行こう」とか考えがちだと思います。もちろん、お金もあって英語も話せるにこしたことはないですが、現地で学んだほうが早いことも多いです。英語はコミュニケーションのなかで耳を鍛えたほうがいいと思います。

ニューヨークでの仕事や暮らしが合わない人もいます。とりあえず、3カ月行ってみて、そこで自分がやっていけるかどうか考えてみるのもいいかもしれません。日本の場合はアシスタントの下積みがないとヘアメイクアップの仕事をもらえないことも多いと思いますが、ニューヨークではポートフォリオがよければ、エージェントから仕事をまわしてもらえることもあります。だから、海外で働くことに興味があるのなら、行くと決めて情報収集して、現地に飛び込んでしまいましょう! 応援しています。

Nishiyama_提供

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