クリエイション
2025.1.24
#35 creative SHOWER –美と、感性を、あびる時間– Q-TA式コラージュの真髄 奇妙で美しい世界のつくり方
美容技術者をはじめ、美に携わる方々にとって自身のクリエイティビティや仕事に新たな価値を生み出すオンラインサロン「creative SHOWER」。毎回豪華なゲストをお迎えしています。
今回のゲストは、シュルレアリスムを独自の解釈で再構築し、ファッション性の高いコラージュアートで国内外で活躍するアートディレクター・Q-TAさん。ナビゲーターは、美容界の第一線で活躍し続ける資生堂チーフヘアメイクアップディレクターの計良宏文。本記事では、収録された動画コンテンツからトークや、コラージュの実践風景をダイジェストでお届けします。
Q-TA(キュータ)●アートディレクター / デザイナー / コラージュアーティスト
シュルレアリスムを独自の解釈で表現するファッション性の高いポップなコラージュ&ビジュアル作品で、GUCCIのアートプロジェクト「#GucciGram」や、ディズニー映画「Alice Through the Looking Glass」のInstagramキャンペーンへの作品提供をはじめ、アパレルブランドとのビジュアルコラボレーションやCM、CD、雑誌、装丁、装飾デザインなど国内外で活躍する。
計良宏文(ケラ ヒロフミ)●資生堂チーフヘアメイクアップディレクター。インターコワフュール・ジャパン理事、日本ヘアデザイン協会(NHDK)ニューヘアモード創作設定委員長、資生堂美容技術専門学校テクニカル・ダイレクター、一般社団法人ジャパン・ビューティーメソッド協会上級認定講師。2020年7月ヘアメイクアップアカデミーSABFAの8代目校長に就任。
INDEX
まだ誰も見たことがないものを出したい
計良
アートディレクターであり、コラージュアーティストでもあるQ-TAさんをお招きしました。ちょっと作品をご覧いただき、振り返りながらお話を伺えたらと思います。
まずは、私も一緒にさせていただいたこちらの作品から。RöEというアーティストがデビューしたときのものですね。RöE本人はうずくまっているような写真でしたけれども、その周りに何か花とか存在感があるものをコラージュされて……。
Q-TA 計良さんにつくってもらったヘアが見えないので申し訳ない作品ですね。
計良 仕上がりを見たときに、「あれ?ヘアメイクが写ってない?」と(笑)。でも、歌のテーマなどを含めた時に、このくらいやったほうがいいのかなと思いました。
RöE「VIOLATION」
計良 次はバランスがすごく面白いですね。
Q-TA ビジュアルに加えて「どっちか選べって言われたら、僕はどっちも選ばない。もう一つの価値観が何でそこに出てこないんだろうとか、ないなら自分から提案しなきゃいけない」とか、そんな感じのことを書いたはずです。ぱっと見で、二人いるんだけど、モデルなのか何なのかっていう価値観を表現したかった。余白をつくってあげたいんですよね。
計良 それは受け手に対してですか?
Q-TA 何か言われたことをやるよりは、新しいアイデアを出して、相手に「こんな考え方もあるんだ」と伝えられたら、次の仕事にもつながると思っています。なので喧嘩することも多い。言われたことだけを頑張るのではなく、『こういうアプローチもある』『こういうアイデアもある』と、まだ誰も見ていないものを出していきたいんです。
Maybe! Vol.11「究極の選択」
読み進めると表紙の意味が見えてくる
計良 続いては本の装丁ですね。
Q-TA
本に関しては美しさを出したいと思っているんですね。美しい表紙の本を読んでほしい。その本の内容が直接写っている表紙にはしたくない。『美しい』という理由で本を手に取ってほしいんです。本を途中まで読んだ方って、表紙を見たときに見え方が違うんですよね。この表紙が意味していたものが、読んでいるうちにどんどんわかってくる。
その物語を総体的に見たときに、まとっているテーマをうまく混ぜていくことが大事で、だからそこを読み取るために同じ本を何回も読まなきゃいけない。みんなが気づく本質を覆う薄い膜みたいなところで何か表現したいなっていうのは、いつも考えています。
計良 直接的ではなく間接的に見せることで、粋やおしゃれといった感情を揺さぶられますよね。
Q-TA ムードを出すためには、やはり間接照明ぐらいの気持ちのいい光が必要です。一人がワーッと光を発し、みんなが眩しいという仕事もたまにはいいんですけど、僕は間接照明の微妙なさじ加減をやってるほうが楽しいんですよね。
河出文庫「私という名の変奏曲」連城三紀彦(著)
コラージュアーティストはDJと似ている
計良 Q-TAさんがどういった流れでコラージュアーティストになったのか、その経緯をぜひ聞きたいです。
Q-TA
僕は学生時代に音楽を聴き漁っていまして。それと同時に音源のジャケットやビジュアル周りも常に吸収していて、その過程でシュルレアリスムにたどり着いたんですよね。
で、18歳ぐらいでDJを始めて、30代途中ぐらいまでは続けていて。クラブイベントのためにフライヤーとかビジュアルをつくんなきゃいけないので、自分でデザインをし始めたのもそのタイミングです。だから音楽がメインで、クラブでかける映像をつくったりとか。
計良 それもできちゃったっていう感じですか。
Q-TA
できちゃいました。コラージュアーティストってDJと同じで、素材をチョイスしてミックスするじゃないですか。自分で新しい曲をつくるんじゃないんです。あるものを組み合わせて、その組み合わせの妙感で「これだよ」って言わせたいわけですよ。
なので人気がある曲を続ければいいっていう話じゃなくて、この曲を聴かせたいのであれば、やっぱ何曲か前でそこに行くための道順をつくらなきゃいけない。むしろ手前で落とさなきゃいけない。それを構築していく過程が本当に気持ち良くて。
計良 それがもうそのままコラージュアーティストに繋がったという。
Q-TA 強調したいところを持っていくためにどうするかとか。間引く行為が絶対的に必要だし、そこが繋がっているのかもしれないです。
手を動かすから、感じられることがある
計良 Q-TAさんが作業している姿をちょっと見たいなと思っているんですけれども、大丈夫ですか? 私も一緒にやります。
Q-TA コラージュバトルですか。実際手を動かして感じることって多々あるんで、これはぜひ経験していただきたいな。
計良 普段はどういう本を素材にしたりするんですか。
Q-TA 多いのが60年代、70年代のちょっと古い、ちょっとクラシカルなVOGUEとかですね。印刷や写真の粒子の荒さとか、雰囲気があるので。あとコラージュは有機的なものと無機質なもの、熱いもの、冷たいものとか硬いもの、柔らかいものっていう組み合わせが面白いんです。
計良 素材の選び方に幅があると、組み合わせた時に面白さが生まれますね。
Q-TA コラージュの注意点ではないですけれど、慣れてない人は空間を埋めたがっちゃうんですね。僕は引き算をしながら、余白を空けることが大切だと思っています。
計良 日本的な発想、侘び寂びですね。ただ、ただ綺麗っていうよりは、ちょっと斬新さみたいなものとかも必要だったりしますか。
Q-TA 斬新じゃないと面白くないですよね。他の人が見たときにどう思うかって本当に大事で。どちらかというと驚いて欲しいっていう感情の方が強いので、綺麗で終わっちゃうと伝わってないな、みたいに感じてしまうんですよね。
計良 さて、一応完成ということで、私からはこんな感じです。
Q-TA すごくまとまっています。ちゃんとした着地だと思います。
計良 もっとこうしたら面白くなるみたいなアドバイスがあればお願いします。
Q-TA
顔という認識をもっと冒険したらどうなるんだろうとは思いますね。人の顔っていう概念すら超えたところで、コラージュだったらっていうところ。ただね、なんかちょっとこう笑える感じになるかな、計良さんの作品で笑いたいなと思ったんですか。普通にうまかった。びっくりしました。
僕の作品なんですけれど、コラージュって二度見してなんぼなんです。これが広告だった場合、ぱっと見てあれ何だったんだろう?って不思議な感じを抱かせたい。だから二度見をどうさせるか、どこまで崩せるか。でも何か意味ありげで、なんかちょっと美しいなみたいなところを目指しています。ただまあ難産でしたね。
これは僕なりの生け花ですね。下の手が剣山的なイメージで、手の中で物が つくられていくような。こだわったのは、指輪を付けた点ですね。あとはですね、僕って糊をポイントにしか付けないんですよ。あまりペタッって付けなくて。
計良 ちょっと浮いていて、立体的に重なっている感じもします。
Q-TA あとはやはりコラージュは、日によって表情が違うとか、受け手側の気持ち次第で変わるのが面白いので。答えを出すんじゃなくて、いろんな答えが上がってくる作品を出そうっていう気持ちがすごく大事だと思いますね。
組み合わせる楽しさが、産みの苦しみを凌駕する
計良 Q-TAさんがクリエイティブシャワーを浴びてるなと感じる瞬間はいつですか?
Q-TA コラージュって、フランス語で糊付けっていう意味なんです。素材の組み合わせもそうだし、企業との組み合わせも、人と人との組み合わせもそうだし、僕はそこでどういう糊付けをするかを常に考えています。多分死ぬまで色んなことを糊付けして、色んなことを面白く組み合わせていくんだろうなと思います。糊付けしているときが、シャワーを浴びている時間ですかね。
計良 最後に視聴者に向けてメッセージをいただけますか。
Q-TA
クリエイティブって楽しいだけじゃなくて、すごく大変なことだと思います。でも、何か組み合わせることに楽しさを感じられると、辛いことよりも、何か目の前で組み合わせている楽しさの方が勝るんですよね。
なので、みなさんもどんなことがあっても、とにかく手を動かしてみる。正解がすぐ出てこなくても、何回も繰り返しやっていると、どんどん答えが近づいてくる。コラージュ的な感覚を身につけて、いろんなことに対して向かっていってくれたらいいなと思います。
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