SABFA magazine

知識

2024.1.24

#22 学びへの投資が、何倍にもなって返ってきた ~LILI 三好真二~

【三好真二】
香川県生まれ。高津理容美容専門学校卒業後、奈良県内の1店舗を経て上京。1996年SABFA卒業後、HEARTS入社。要職を経て2006年独立。原宿に「LILI」を設立。サロンワークのみならず一般誌、業界誌、全国のセミナーなどで活躍。確かな理論に基づく技術と、親しみやすい人柄で美容師からも支持されている。

都内の有名美容室「HEARTS」(現Double)で店長などを務めたのち独立し、LILIを立ち上げた三好真二さん。サロンワークだけでなく、数多くの一般紙や業界紙撮影で活躍してきました。理論に基づく確かな技術の持ち主として、全国各地のセミナーに講師として招かれています。そんな三好さんが、現在に至るまでの歩みと、SABFAで学んだことがどのように活かされているのか、教えていただきました。

手取り8万円なのに、20万円の講習に申し込む

僕の実家が床屋をやっているので、将来継ぐことも考えて美容師になりました。大阪の美容専門学校で勉強しながら美容室で働いて免許を取っています。最初に勤めたのは奈良にある美容室で、配属されたのは高級住宅街にあるお店でした。そこがとにかく暇だったんですよ。僕の仕事といえば、お客様の車を店舗の駐車場にとめるくらいしかなかった。やる気もなかったし、1年で辞めようと思っていたんです。

時間もあることだし、コンテストにも出ようと思って、シュウウエムラのメイク講習や、信竜淳二さんのヘアセット講習、ヴィダルサスーンのカット講習などで学びました。当時の給料は8万円だったから借金していたんです。ヴィダルサスーンのカット講習は20万円だったから、もう完全に赤字ですよね。でも後先考えたらお金を突っ込めないじゃないですか。アホだからできたことです(笑)。


そんなあるとき、『ヘアモード(女性モード社)』の企画の中で、川原文洋(資生堂クリエイティブチーム「MASA」所属 studio V)さんと山下 浩二(Double)さんの対談を読んだんです。これがカッコよくてね。僕も二人のようになりたいと思いました。

ちなみに、ヘアモードの別冊で、資生堂主催のフォトコンテストもあって、毎月月間賞を発表していました。僕もそれに応募していたんですよ。年配のカメラマンさんにお願いして「こんなんで大丈夫かいな」と思いながらやっていましたね。一応、僕の作品も小さく掲載されていたんですけれど、完全に我流だったから変なスタイルをつくっていましたね。

「東京に行って有名になりたい」その一心で上京

美容雑誌を見ているとスターのような美容師がいっぱいいるわけですよ。それに僕は憧れたんですよね。とにかく有名になりたい。そのためには東京に行くしかないということで、上京することに決めました。

ところが、勤めていた美容室のオーナーが辞めさせてくれなくて「ここで1番になったら行かせてやる」と言われたんです。それで実際に70人いる美容室のトップになったんですよ。22歳のころの話です。

関西でそれだけ頑張ってやっても、東京の美容室では認められません。新卒しかとらないところも多く、22歳というだけで門前払いの美容室もありました。有名店を片っ端から受けて、全部落ちましたね。某有名サロンでも一度落ちたのに、変装してもう一回受けました。集団面接中に別室に呼ばれて、面接官が机に履歴書を2枚並べてね「これ、どちらもあなたですよね?」と問い詰められて(笑)。当然、不合格です。

僕がSABFAを受けたのは、東京で有名になるための最終手段でした。当時からSABFAの入学試験は難関と知られていました。会場には黒ずくめのオシャレな人がいっぱいいましたね。それに圧倒されて「俺はダメだ」と思いました。絶対に不合格だと。ところが、合格したんですよ~、驚きましたね。

美容の本質は、SABFAの学びに集約されている

僕が美容師をする上で一番大事なことをSABFAで学んだと思います。例えば、トップシニヨンとネープシニヨン。髪を結ぶ前に、綺麗に髪をとく作業が大事になるんですが、ここに美容の本質が集約されていると思います。

今は情報がいっぱいあるから、素人でもヘアアレンジができるんですよね。見た目はそれっぽく見えるかもしれないけれど、基本ができているかどうかで差は歴然なんです。少し触っただけでわかります。

髪を綺麗にとかすにはどうしたらいいのか。毛の流れも知らないといけないし、艶の出し方も知らないといけない。髪そのものを深く理解しないとできないです。どんなにカットやセット、アレンジが上手くても、土台となる髪を綺麗にできなかったら、美しさを最大まで引き出せないんです。

人脈も広がりました。同級生や先生もそうですし、OB・OGとのつながりも財産です。クリエイティブコンテストなどにはSABFAと関係がある人が、出場者にも審査員にもいっぱいいますからね。美容業界のイベントのパーティーや懇親会などにも必ずいますし。尊敬していたSABFA に縁のある川原文洋さん、森川丈二さんと出会えたのも嬉しかったですね。

入社初日から撮影中のオーナーに「メイクやります!」とアピール

卒業後は、山下 浩二さんのサロン、HEARTS/Doubleの HEARTSに入りました。みんなよりスタートが遅かったので、とにかく自分が台風の目になってやろうと思い、初日からガンガン行きました。

僕の入社初日、ちょうど山下さんがヘアモードの撮影をしていました。山下さんが自分でメイクをしているのを見て、「メイクやります!」とヘルプに入ったんです。それはSABFAでメイクを学んだから少し自信があったんでしょうね。
それがきっかけで、撮影のヘルプに入れてもらえるようになりました。
アシスタントでメイクボックスを持っているのは僕しかいなかったんです。しばらくすると、みんなもマネしてメイクボックスを持つようになりました。

サロンに入ってから1年間は休みを削って山下さんの撮影についていくか、仲の良いフォトグラファーのアシスタントと撮影をしていましたね。撮影スタジオが休みのときにタダで使わせてくれるから、美容師とカメラマンのアシスタント同士で練習会をやって腕を磨いていました。

そうして作品を撮り溜めて、出版社の編集部に持っていったんです。「なんだこれ?」みたいにボロカスに言われましたけれど、New comerという企画で1ページもらうことができたんです。山下さんにも協力してもらって、こだわりの1枚を撮りました。英字新聞を敷き詰めた空間にピアノを置いて、モデルさんを撮影したんですよ。カメラは山下さんです。その作品が、僕が胸を張って世の中に出した最初の作品ですね。

その後、クリエイティブコンテストにも出場し、JHAのファイナリストにも選ばれました。グランプリにはなれなかったけれど、僕はまだ全然諦めていないし、ピークはまだ来ていないから、リベンジしたいと思っています。今もチャレンジは継続中です。

悩んだとき、SABFAで学んだ基本に立ち戻る

日頃のサロンワークと撮影の全てにおいて、SABFAで学んだことが生かされていると思います。特に自分の中で大きいのは、SABFAで学んだ基本に立ち返ることができることです。基本を知らなかったら、悩んだときに戻ることができないんです。基本に戻ることで、視界が開けることがある。だから、基本が大事なんです。

男性もメイクに気を遣う時代ですから、メイクの知識や技術を提供して、喜ばれる機会も増えています。メイクには人を変える力があります。フルメイクする必要はなくて、1mmに満たない、少しの変化を加えるだけで印象はガラリと変わりますよね。その人に足りないところをちょっと足してあげるだけでいい。これはメイクを知っているからできることです。

メイクをしていると、自分の美意識も高まりますよね。自分がだらしなかったら、技術に説得力がなくなってしまいますから。

こんな感じで、SABFAで学んだことの影響っていろんなところにあるんですよ。なので、SABFAに興味がある人はぜひ勇気を出して飛び込んでほしいです。お金も時間もかかるけれど、投資した分は必ず自分に返ってきます。僕もそうでしたから。考えている暇があるなら、一歩踏み出すことですね。

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座右の銘「初志貫徹」

昔から僕の座右の銘は、初志貫徹ですね。自分が一回決めたことに関しては、覚悟を決めて貫かなきゃいけないと思う。どんなことがあっても、やらないといけない。でも、人間って弱いから、そう簡単じゃないです。横道に外れることもあるけれど、最後に「ここ」というところに辿り着く。これはもう自分の性格かもしれません。

ただ、あんまり意固地になるのもよくないから、バランスも大事ですよね。だから自分の場合は、あえて「できるだけ」を付け加えた「初志貫徹」が理想ですね。

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