SABFA magazine

クリエイション

2022.9.22

♯11 creative SHOWER –美と感性をあびる時間– UDA navigated by 進藤郁子 『mekashi project』イベントレポート

美容技術者をはじめ、美に携わる方々にとって自身のクリエイティビティや仕事に新たな価値を生み出し、表現の幅を広げる機会を目指すイベント「creative SHOWER」。毎回豪華なゲストを講師としてお迎えしています。
第2回目のゲストはメイクアップアーティストのUDAさん。数多くのファッション誌、広告、ショー、俳優、文化人のメイクなど幅広く活躍されているUDAさんの発想の源を紐解くトークセッションでは、資生堂アーティストの進藤郁子がナビゲーターを務めました。本記事ではイベント当日の様子をダイジェストでお届けします。

【 UDA (ウダ) 】
大手化粧品会社にてPR、マーケティング、教育、 店頭プロモーションなど様々な業務に携わり、その後独立。
現在は、国内外のエディトリアル、コスメティック・ファッション のキャンペーン広告、企業CM、舞台、ドラマなど多岐にわたり活動している。独自のファッション感、ビューティの視点を生かしたメイク連載 GINZAの「ニッポン美人化計画」は定評があり、日頃から様々なビューティの場面での新しいアプローチを試みている。
今冬、ZINEをリリース予定。
著書:「kesho:化粧」(NORMAL / 第25回日本自費出版文化賞 グラフィック部門入賞作品)


【 進藤 郁子 】
資生堂トップヘアメイクアップアーティスト。ファッション誌や美容誌、ルックブックの撮影や、ニューヨーク、パリ、東京でのコレクションのヘアメイクアップのほか、美容師向けのセミナーなど幅広く活躍。感度の高いミレニアル世代から支持され、多くの女優やタレントから指名で依頼を受けている。「ジャパン・ヘアドレッシング アワーズ(JHA)」などさまざまなヘアコンテストで賞を獲得。


UDAさんのメイクアップデモンストレーションからスタート

今回のcreative SHOWERは、UDAさんの提案で、参加者のみなさんが会場入りする前から、UDAさんがすでにデモンストレーションをしているという演出から始まりました。
入場した参加者のみなさんは、(えっ!始まっているの?)という戸惑いの表情を見せながらも、早速UDAさんの手元に注目。
時折、参加者のほうに視線を向けつつも、静かに手を動かしているUDAさん。なんとも言えない空気が会場をつつんでいました。

拍手とともに、感嘆の声が聞こえてきました

UDA×進藤郁子トークセッション

デモンストレーションに続いて行われたのは、UDAさんの作品を題材にしたトークセッションです。資生堂アーティストの進藤郁子が、UDAさんのクリエイションの発想の源を探りました。

UDAさんの作品とあふれ出る言葉に目と耳を奪われ、気がつくとトークセッションは予定時間を大幅にオーバー。そのトークセッションの中でUDAさんが明かした「クリエイティブのヒント」となる言葉を一部ご紹介します。

妄想の世界の中にいる人を連れてくる

僕が強く心惹かれるのは「民族」「ヘビメタ」「宗教」です。作品づくりにおいても、そこからインスパイアされることがすごく多い。例えば「民族」の場合、僕は新しい民族をつくってしまいます。「この民族は鳥を神として崇めていて、この人はその王様だ」とか。ちなみに作品の名前は「ティターンズ」としたのですが、これは機動戦士Zガンダムの中に出てくる架空の軍閥の名前です。

※出典:re-quest/QJ

※出典:re-quest/QJ

続いて美容業界誌から「自由にクリエイションしてください」というお題をいただいたときに制作したのが「ニューピープル」です。文字通りの「新しい民族」ですね。
これは僕の勝手なイメージですが、どちらかというと地球の南側の温暖な地域に暮らす民族は、体に動物を模した力強いデザインをしていると思います。一方で、北側は繊細なイメージがある。謎に包まれていて、もしかしたら宇宙人と関係しているかもしれない。そんな風に妄想を膨らませてつくっています。

※出典:装苑

最初にデザイン画を50枚くらい描いて、そこから10枚くらいに絞り込んで現場に持っていきました。妄想の世界を広げて、その世界の中で生きている姿をイメージして、その人を目の前に連れてくる。僕は現場でそういうことをしています。

ナチュラルをつくることは本当に難しい

非日常的な世界に住む、妄想の中のキャラクターであっても、鮮明にストーリーを描いていくとリアリティが生まれてくるものです。逆に、ただ奇抜なだけでリアリティがないと、「これは誰?」と違和感のあるものになってしまう。妄想の中の世界であったとしても、その世界の中でのリアリティがあれば、それはリアルな作品になります。
「ナチュラル」というと柔らかい色を使うイメージを持つ人がわりと多いと思います。でも、そうではなくて、本当はナチュラルな表現ってとても難しいものです。重要なのは、その人が描いた世界観の中でナチュラルかどうか。リアリティがあるかどうかです。
ちなみに僕は、現場でヘアメイクアップをしながら、「やっぱりこっちがいい」と軌道修正することがよくあります。もちろんできる限りの準備をして臨むわけですが、最初のアイディアに固執すると、往々にして作品が小さくまとまってしまう気がします。

モデルに空気を纏わせ、爪痕は残さない

例えば、女優のメイクアップをしたとき、見た人に「濃いメイクをしている」だとか、そういう風に捉えられたらダメなんです。

その撮影の世界観、例えば80年代、70年代のナチュラルというテーマだったら、そのイメージとなる世界に実際にいそうな人に見えないといけない。その世界にいそうな人になれば、ぐっとリアリティが出てくる。
僕がやっているのはヘアメイクアップですが、ただメイクをしているわけではないのです。その世界の中に生きる人になるように、モデルをその世界に送り届けてあげる。ヘアメイクアップをすることで、キャラクターが持つ空気、気配を纏わせる。そして、作り手の爪痕はできる限り残さない。これが大事だと思っています。

クリエイターは自分の作品をつくるべき

全てのクリエイターは、できるだけ自分の作品をつくるべきです。仕事をする上でも作品をつくっている人とそうではない人には差があります。作品は自分の中にあるもの。自分の中にあるピュアな部分だと思います。そこを確認していく作業なので、自分の思考も深まるし、新しい技術も養われるし、仕事をしているときもパッとアイディアが浮かびやすくなる。
作品のつくり方はどんなカタチでもいいと思います。絵を描いてもいいし、写真を撮るのでもいい。そこで、自分の思っていることを純粋にカタチにしていく。そうすると、自分の感性を活かして仕事ができるようになります。
仕事は、広告であれ雑誌であれ先方の発案から始まるものです。美容師の場合はお客様から求められるものがまずあります。そこに対して自分の感性を使って、答えを出す。そうでない場合は、先方の言われたままにつくることになってしまう。相手の方は「はい、これで大丈夫です」と言ってくれるかもしれない。でもそれは最低限の仕事でしかありません。

赤い口紅が似合わないと避けるお客様に新しい世界を見せる

普段から作品をつくって感性を磨いていたら、オーダーの中に自分の感性をつかって何かを見つけられるかもしれない。掴んだ何かを自分のディレクションで表現する。それにより、相手の想像している延長線上にある「想像できていなかったもの」を提供できると思います。
僕が化粧品会社に勤めていたころの話です。赤い口紅が似合わないというお客さまがいるとしたら、なぜ避けるのか理由をまず知ることから始めます。赤い口紅が単純に嫌いなのか、似合わないと思っているから嫌いなのか。「似合わないと思っているから嫌い」なら、似合えば好きに変わるわけです。その人にとって新しい世界が生まれることになる。同じようなことは、どんな仕事にも通じると思っています。

メイクアップデモンストレーション

トークセッションを終えたのちに、再びUDAさんのメイクアップデモンストレーションが行われました。その2作品がこちらです。

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

※Photo_MASATO KAWAMURA/スタイリスト_KANAKO SUGIURA/ヘア_Nori Takabayashi(YARD)/モデル_Chen Xi(mille management inc.)・Hiromi Ando(mille management inc.)

「肌の温度感を見て、色気を仕込む」「顔の焦点を定める。それは目なのか、口なのか」「メイクにはリズムがある。リズムに合わせて口から目、目から口へ」など、解説の中から印象的な言葉も飛び出しました。

UDAさんからcreative SHOWERの参加者へのコメント

最後にUDAさんから参加者へのコメントをいただきました。
僕もまだまだ道の途中というか、やりたいことを一つひとつ進めているところです。そういう意味で、みなさんと一緒だと思います。

僕たちがやっているのは、楽な仕事じゃないと思います。でも、作品づくりや仕事で感性を働かせて、自分の中に持っているものを確認できるようになると楽しくなるし、人の目に留まるようなクリエイションを生み出せるようにもなる。僕自身もそういうクリエイションを続けていきたいと思います。

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次回のcreative SHOWERもご期待ください。開催情報はSABFAのHPから事前にご覧いただけます。ぜひご参加ください。


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